
POLICY
政策
危機を克服し、未来への夢・希望を取り戻すための8つの政策
『 東国原八策 』
目前に迫る人口減少時代
2007年に私が知事に就任した時、宮崎県の人口は約114万人。これが2022年には105万人にまで減少してしまっています。2030年にはいよいよ100万人を割り込んで98万人にまで減少し、2040年には88万人にまで落ち込む見通し。
なお、その殆どが現役世代(20~64 歳)の減少によるものです。(国立社会保障・人口問題研究所による推計)
地域別に見ると、今後たった10年の間に、宮崎県下26市町村のうち実に14自治体で、高齢者人口(65歳~)が現役世代よりも多くなる・・という状況です。
現役世代が1人で高齢者1人以上を支えつつ、同時に仕事や子育てもしなければならない・・という時代が、既に始まってしまっているのです。
人口減少は、宮崎の社会・経済基盤を大きく揺るがす
人口減少が社会や経済にもたらす影響は深刻です。まず初期症状としては、店舗(小売・飲食・娯楽)や工場、病院などが次々に地域から撤退することで、生活利便性の低下や、就業機会(雇用)の喪失といった問題が段階的に発生します。同時に、事業所・住民からの税収が減るので、中期的には、2030年に向けて現在の2割近く需要が増大すると見込まれる医療・介護を含む行政サービスの低下や、2040年に向けて多くの施設がその耐用年数を超過する社会インフラの更新の先送り、地域公共交通の撤退・縮小といった問題に歯止めがかからなくなります。更に、自治会や消防団、祭りといった地域コミュニティも少しずつ失われ、宮崎という地域の魅力が低下してしまう。耕作放棄地や空き家も増えていきます。
その結果、現役世代の県外転出は止まらなくなり、更なる人口減少が巻き起こる・・という悪循環の構図に陥ってしまう。そして、一度この悪循環に嵌ってしまうと、脱却は簡単ではない。
これに加えて、新型コロナウイルスの影響です。2020年の年初から足元にかけての日本全体と宮崎県の景気動向指数を見てみると、宮崎県は日本全体に比べて落ち込みが大きく、回復も遅れてしまっています。宮崎県の主力産業である観光業への影響は言うまでもなく、全国の飲食店への影響が、食糧供給基地である宮崎県へのマイナスとなって襲ったとも考えられます。
夢や希望、志がなければ、危機を脱することはできない
思い返せば、2007年1月、私が知事職を拝命したときも、宮崎県は未曾有の危機の渦中にありました。現職の知事が官製談合事件で逮捕されるという、宮崎のイメージを地に落とす報道が、毎日のように全国発信されていたのを記憶されている方も多いと思います。
そして、危機は続きました。就任直後には県内で鳥インフルエンザが発生し、宮崎県の主力産業である畜産業へのマイナスイメージが懸念されました。また同年は、宮崎県における自殺死亡率が全国2位を記録するという状況でもありました。更に、2008年にはリーマンショックによる全国的な景気後退、そして2010年には口蹄疫の発生・・。本当に厳しい状況が続きました。
多くの危機を乗り越えることができたのは、ひとえに県民の皆さまの強い意志と努力、そして誇り。また、それらが結集した県民総力戦を実現できたからです。ただ、あの4年間、宮崎県民が一丸となれたのは、共通の夢や希望を全員で共有できていたからではないでしょうか。私自身も危機対応の最前線にいましたが、あれだけ多くの困難・危機に、毎年のように直面しつつも対処することができたのは、「宮崎の未来は明るい」「宮崎の勢いを止めてはならない」という強い思い・意志が、県民全員の意識の根底にあったからだと思っています。
危機を克服し、ワクワク感ある宮崎の未来を創造するための8つの政策
人口減少という危機は、16年前の危機と比べると、少し分かりにくいかもしれません。しかし、その影響の範囲と深さが、より一層深刻なものである・・ということについては、議論の余地はありません。もし、このまま有効な対策を講じることができなければ、成長をけん引すべき農林水産業や観光などの産業などで担い手が不足することを含めて、これまで宮崎が培ってきた価値の多くを、これから10年の間に失ってしまうことになる。
そして、残念ながら、現在実施されている取り組みでは、この問題を解決できないと考えています。事実、宮崎の人口減少は歯止めがかからず、その悪循環のスパイラルは、既に私たちの足元で回り始めてしまっている。
私は、この危機を克服し、宮崎に再びワクワク感ある未来を創造するための政策「東国原八策」を取りまとめました。県民の皆様のこれまでの努力と宮崎が持つ無限の可能性に、私が貢献できる要素やリスクを取って挑戦できる要素も加えた、現状の緩慢なる延長を打破し、まったく新たな希望ある未来を創造するためのアイデアです。
なお、この政策は完成品ではありません。あくまでも県民の皆さまにお示しする叩き台です。選挙を通じて多くの県民の皆さまと議論を重ね、誤りがあれば正し、優れたご意見があれば追加するという形で進化させたいと考えています。そして、選挙を通じてまとめられた政策の実現に、全身全霊で取り組みます。
【 東国原八策の目標と内容 】
東国原八策は、コロナ等による経済の低迷と宮崎県の少子高齢化・人口減という二つの危機に対応し、以下のふたつを目標として実施します。
コロナ等で傷んだ地域経済を立て直し、経済の強化・底上げにより、
県民所得や賃金の上昇等を目指し、県民の生活水準・暮らしを向上させる
宮崎県の人口減少に歯止めをかけ、100万人台を維持できるようにする
この目標を達成するために、宮崎県の経済成長と宮崎県民の安全・安心を増進、すなわち宮崎で暮らすことに物心両面で豊かさを実感できるようにするための政策を以下に記載した8つの領域で総動員し、その達成に向けてリスクを取り、全身全霊で取組みます。

景気経済雇用対策、少子高齢化・人口減対策
01
「稼げる宮崎」「人口減少に打ち勝つ宮崎」の実現に向け、デジタル化を推進し、宮崎県民・企業・団体・行政が総力戦に加え、知見・技術等を持つ県内外の企業・人材等最善のパートナーを巻き込んで、東国原八策に書かれた全ての政策の遂行と、目標の達成を目指す仕組みを作る
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宮崎の地域経済の屋台骨となっている中小企業の抱える課題解決や持続可能な経営の推進に向け、国や市町村、教育機関、金融機関、各関連団体と緊密な連携を図り、雇用維持に向けた施策を強力に推進する。また、地域の課題解決やイノベーションの創出に資するスタートアップ企業の育成支援を強化する。
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宮崎県の企業・団体に、他の都道府県に勤める人材が副業として関わることができる機会を広く発信し、幅広い人材を活用できる仕組みを作る。
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出生数の減少を食い止めるため、宮崎が日本一となるような子育て環境の整備を進めるとともに、宮崎への転入者増加に向け、二地域居住等の促進、移住者定着の更なる促進、ふるさと住民票(デジタル住民票)の議論の促進を図る。
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宮崎県へのふるさと納税を活用して最先端で宮崎県らしいリモートワーク可能な拠点を整備する。返礼品として、この拠点を自由に利用できる権利を付与することで、実質的に複数地域へ住民票を置ける仕組みの構築等を検討し、デジタルノマド*1などの自由な働き方を実践する人材が宮崎県に集うきっかけを作り出す。
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県庁内にオープンイノベーション*2を担う組織を作り、東国原八策に記載された政策などについて、県内ないしは新たに宮崎県に進出して連携することを希望する企業・団体をパートナーとして公募する仕組みを導入し、政策の実現に向けて双方が人材や資金、ノウハウを持ち寄って進める。
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デジタル化に向けたパートナーを求める県内の企業・団体・行政に対して、共同でパートナー探しを行う仕組みを作る。
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オープンイノベーションを推進する上で、政府の進めるデジタル田園都市国家構想やデジタル改革、規制改革、行政改革の取り組みと足並みをそろえ、既成概念にとらわれず、全国のモデルとなるような取り組みに宮崎県が率先して取り組む。
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オープンイノベーションやデジタル化を進める上でのインフラである5G(第5世代移動通信システム)の普及率向上に向けて、国の方針に基づいて通信事業者やインフラシェアリング*3事業者との対話を進め、補助金等も活用して整備を推進する。
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オープンイノベーションに基づく先進的な取り組みにおいて、企業版ふるさと納税を積極的に活用する。
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オープンイノベーションの担い手となる県内の高度IT人材の育成・確保に向け、初等中等教育機関におけるSTEAM教育*4を推進すると共に、パートナー企業と連携して実践的な教育・実践機会の提供の場を創設する。
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国と連携し、突出したIT人材を発掘する国家プロジェクト「未踏」から生まれた「未踏IT人材*5」と県内の学生や企業との共創を生み出す取り組みを進める。
*1 ITを活用し、国内外を旅しながら働く人材
*2 地域内外のあらゆる知見・技術・サービス等を活用して事業の促進や創出を目指すこと
*3 5Gの導入に当たっては基地局の小セル化や多セル化が必要となるが、鉄塔の設置場所やビル等の物理スペースは限定的。
ビル屋上や郊外部等の屋外において鉄塔等の設備を他人に使用させる、又は複数事業者間で共同使用すること
*4 Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学・ものづくり)、Art(芸術・リベラルアーツ)、Mathematics(数学)の教科の知識や考え方を統合的に働かせて解決する学習手法
*5 イノベーションを創出することのできる独創的なアイデア、技術を有するとともに、これらを活用していく能力を有する優れた個人

農林水産業(1)~農畜水産業振興*6~
02
宮崎県産品の国内外に対する異次元のPRに加え、年率20%という驚異的な伸び率を示す農畜水産品の輸出を強化するなど、更なる販路拡大を推進するとともに、高付加価値化・6次産業化・農商工連携によって宮崎の雇用を支える成長産業化を確実なものにし、中小規模農家の持続力強化にも取り組む
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トップセールスによる宮崎県産品の売り込み・全国的・世界的PRを早急に実施し、県産品のプレゼンス向上を図る。
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県庁内に、県内事業者の海外販路拡大・マーケティング*7・プロモーション等支援や、多彩な国の支援策の活用等一気通貫型のサポートを行う「海外輸出営業本部」を設置するとともに、現在香港に加え、近隣他県やネットワークのある民間企業との連携で、県産品輸出を抜本的に拡大する。
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国の「GFPグローバル産地づくり推進事業」に採択された牛肉、果樹、野菜、ぶりなどの品目について、国と連携して輸出拡大を図っていくとともに、国の掲げる他の輸出重点分野(28品目)に名乗りを上げる企業の発掘にも取り組む。
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県内に立地する食料品・飲料製造業者や、飲食料品卸売業者への支援を通じ、県内で採れた農畜水産品の6次産業化、農商工連携、高付加価値化を推進する。ひいては、「稼げる農畜水産業」の創出、フードビジネスの振興促進に繋げる。
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国による支援を活用しながら認証制度(ひなたGAP)の対象範囲を拡大するとともに、国際GAP認定の取組み推進、トレーサビリティの確保・強化等を通じ、国際市場における「安心・安全な宮崎農畜水産品」のプレゼンスを高める。
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国による支援を活用しながら宮崎県の農畜水産品を効率的に国内外市場に送り出すため、輸出物流拠点を整備するとともに、大ロット化、IT化の促進、物流標準化、共同輸配送等の推進により農畜水産品物流の機能を強化する。
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中小規模農家が直面する人手不足に対応するために、新規就農支援をはじめ、国の支援等を活用した事業を行うとともに、中核的リーダー育成や収入源の多様化支援にも取り組む。
*6 シイタケ、タケノコ等の特用林産物も含む
*7 プロダクトアウトからマーケットイン(顧客の意見・ニーズを汲み取って製品を開発する)の発想を実施する取組の深化

農林水産業(2)~森林・カーボンニュートラル*8~
03
日本最大の製材生産拠点である宮崎の強みを生かし、ウクライナ戦争等の影響で高騰する輸入木材の宮崎県産木材による国内での代替と輸出を強力に支援すると共に、これを支える森林資源の保全活動を強化し、意欲と能力ある森林経営主体の育成を推進する
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国の「GFPグローバル産地づくり推進事業」の今後の公募において、製材の品目で挑戦する県内事業者を発掘し、この取り組みを全力で支援する。
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県内の全ての製材業者と県の連携を更に強化し、宮崎県産材の大都市部や海外でのトップセールスなどを通じてPR活動を支援するなど、宮崎県産木材の市場拡大を後押しする。
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県内の森林資源を長期的に維持し、森林のカーボンニュートラルへの貢献を持続させるために、森林環境譲与税等を活用した違法伐採の監視強化や再造林を行わない山林所有者への指導強化を、市町村とも連携して推進する。
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カーボンニュートラルの実現に向けた森林クレジット*9の増大に向けて、国のJ-クレジット制度運営委員会が行った改定制度の活用を、国と連携して進めることで宮崎県の森林への民間投資を促進する。
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所有権が細分化し、持続的な経営の困難な山林所有者については、森林経営管理制度や森林経営計画制度を活用した集約化の取り組みを、市町村とも連携して推進し、県外企業からの参画を公募することも含め、県内に意欲と能力ある森林経営主体を育成する。
*8 温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、全体としてゼロにすること。(政府の2050年目標)
*9 森林の適切な管理(施業)を行うことによる二酸化炭素吸収量の増加量を環境価値として認証したもの

観光
04
新型コロナで県内観光業及びサービス業が負った大きなダメージからの回復、振興のため、国内外の宿泊旅行客の集客
の抜本的強化を実現するとともに、県全体の受入環境整備や、青島エリア・空港・総合運動公園等の一体的な利活用を強化する
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長年培ったネットワークと経験を活かして国内外への宮崎県のPRに取り組むとともに、県内在住者・出身者・訪問経験者・宮崎ファン等と協力して、観光コンテンツの新規開発・磨き上げを実施する。
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青島エリアなどの県内に存在する魅力ある観光地を開花させ、シーガイアなどの既存MICE施設と連携しながらMICE誘致を促進するために、近隣県に比べて不足しているリゾートホテル誘致に取り組む。
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県の抜本的な観光プロモーションへのテコ入れや、リゾートホテルなどとの連携強化、宮崎空港の競争力強化を図るとともに、空港のさらなる進化を目指して、国の政策とも連携した地方間路線の強化、国際線誘致機能の抜本的強化、近隣他空港との連携強化に取り組む。
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青島エリアにおいて象徴的な集客施設を整備するために、ひなた宮崎県総合運動公園や「こどものくに」などを利活用して、民間企業に対する市場調査・情報収集(マーケットサウンディング*10)や民間企業からの提案の募集を実施する。
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県外客からの評価が相対的に低い県内の交通アクセスの抜本的な強化に向けて、県内交通事業者とも連携した観光MaaS*11の推進、ユニバーサルツーリズムの実現、キャッシュレス決済の導入促進等インフラの強化を図る。
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高千穂エリアから日南・串間エリア等県内各地の日本神話を核とした世界遺産への登録に向けた運動を立ち上げつつ、奈良県等他県との連携も視野に入れ、申請を検討する。
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これまで約12年にわたって活躍してきた宮崎県のゆるキャラ「みやざき犬」の苦労をねぎらいつつ、県のシンボルとしてのゆるキャラの今後のあり方を検討する。
*10 民間事業者の意見や新たな提案等を把握し、新たな事業案件の形成や事業の進展を図ることを目的として実施する市場調査・情報収集
*11 Mobility as a Serviceの頭字語。デジタル技術を活用した様々な交通手段を組み合わせによる移動の最適化

医療・福祉・介護
05
新型コロナウイルス感染症を恐れることなく生活のできる宮崎、日本のどこよりも長く元気に、安心して生きることのできる宮崎を築き、これからも人口減少に負けない「元気みやざき100万人」の故郷を守るために、コロナ対策の強化を進めると同時に、県民の命と生活を脅かす三大アジェンダ -自殺・がん・介護予防- への対策を徹底して強化する
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新型コロナウイルス感染症対策:県民の命を守るとともに、宮崎の社会経済活動の両立を前提に、国の基本的対処方針等を十分に踏まえつつ医師を始めとする医療関係者の理解と協力を得ながら、例えば、高齢者施設への医療チーム派遣によるクラスター防止対策の強化、重症化リスクの高い在宅療養者への早期の経口抗ウイルス薬の配送支援等の取り組みを徹底する観点から「みやざき型 新型コロナウイルス感染症 重症化予防戦略(仮称)」を策定、宮崎の現状を踏まえた強力な対策を推進する。
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三大アジェンダ「自殺」:前任期中に対策を強化したことで宮崎県の自殺死亡率は大幅に低下した。しかし、現在でも宮崎は日本で自殺の多い県(全国2位/2020年)とされ、対策のさらなる強化が求められている。一人ひとりの県民の命を守るという観点から、「宮崎県 自殺対策推進条例(仮称)」を制定し、例えば全県庁職員による自殺ハイリスク者の早期発見のためのゲートキーパー研修受講や医療機関による自殺未遂者へのケースマネジメント介入のための体制整備支援、他県に比べて40代の責任世代の自殺率が顕著に高いことを踏まえた雇用面における対策等を徹底する。
(2027年目標:自殺死亡率の大幅な低下を目指す – 全国平均以下、大分県の水準に)
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三大アジェンダ「がん」:宮崎県の「がん」の死亡率(75歳未満年齢調整死亡率)は全国ワースト5位(2020年)となっており、他の都道府県との比較においては、徐々に状況が悪化している。がんは早期発見、早期治療により「治る病気」となりつつある。産業保健等の様々な取り組みとの有機的な連携により対策を強化する観点から、例えば県庁に部局横断の「がん対策推進本部(仮称)」を設置、有識者によるアドバイザリーボードを設けること等により、がん対策審議会を含めた政策の企画・執行の体制を拡充し、対策を強力に推進する。
(2027年目標:75歳未満年齢調整死亡率 10ポイント以上の低下を目指す、先ずは大分県の水準に)
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三大アジェンダ「介護予防」:宮崎県は「健康寿命」が全国的にも良好であるとする調査結果も踏まえ(男性9位, 女性3位/2019年)、2027年までに「健康寿命」全国トップ(及び「平均自立期間」全国5位以内)の実現を目指し、例えば、全県の介護事業所における「重症化予防運動プログラム(個別機能訓練等)」の提供に対する支援、官民連携による介護予防データベースの構築、成果連動型委託契約(PFS)による介護予防のモデルづくり等、強力に対策を推進する。
(2027年目標:「健康寿命」全国1位、「平均自立期間」全国5位以内を目指す)
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今後の医療・介護の基盤を守るために、医師確保に向けた奨学金制度の拡充等を進めるとともに、宮崎県の看護・保健及びデジタルを活用した医療の基盤強化に向けて、例えば、宮崎県立看護大学における「デジタル医療・介護研究科(仮称)」の設置と県内就職率の向上により、高齢化・人口減少・過疎化に対応した新しい、宮崎型の医療・介護の実現に向けた取り組みを進める。

地域経済循環と再生可能エネルギー
06
地域における再生可能エネルギーの供給能力を維持・拡大し、域内経済循環を構築するとともに、「地球にやさしい宮崎県」の創出を目指す。また、宮崎が豊富な水資源を持つことなど独自の地理的条件を活かし、水力発電を推進する。
特に、宮崎県の有する日本有数の水力発電事業を最大活用し、最新鋭の設備導入によって再生可能エネルギーの供給能力を維持・拡大するとともに、これで得られる県の増収やJ‐クレジット制度などを活用したカーボンニュートラル投資を積極化する
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リチウムイオン電池の発祥の地ともいえる宮崎において、その土壌・歴史等に基づき、政府とも連携した蓄電池産業の振興、効率的な蓄電池の研究開発の推進を図るとともに、宮崎GX(グリーントランスフォーメーション)を目指す。
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また、地産地消エネルギー需給体制の構築推進によるエネルギーコストの外部流出の抑制、地域経済循環の実現等を目指す。
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宮崎県企業局の有する水力発電設備のうち、運転開始から40年以上が経って老朽化している発電設備については、全面的に更新あるいは新設を行う。
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数百億円と推定される更新・新設費用については県財政の負担を避け、国の方針や他県の先行事例も踏まえて県企業局が管理主体となりながら、事業自体は民間からの投資を引き出して行う手法を検討すると共に、民間の技術力を活かした発電能力の強化の提案も引き出すこととする。
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更新に際しては、FITの新設型を活用する抜本的な取り組みとすることも検討し、それによって得られる企業局の増収部分は、荒廃した森林の再生強化など企業局や他部局との連携でのカーボンニュートラル投資にも充当する。
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宮崎県企業局が現在有する水力発電設備以外で、増設の余地がないか民間からの提案を求め、優れた内容の提案が得られれば、国の民間提案制度などを活かした事業化を検討する。
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水力発電の機能強化の取り組みの中ではカーボンクレジットの創出についても提案を求め、創出されたクレジットは宮崎県のカーボンニュートラルの取り組みの中での活用を検討する。

社会資本
07
台風14号によって被害を受けた地域の復興を遅滞なく進めつつ、近年多頻度・激甚化している豪雨災害や南海トラフ等の地震災害を念頭に、防災・減災等の災害対策を徹底する。また、宮崎におけるヒト・モノの流れを変えるための新たな社会資本整備を進めながら、未完成の重要インフラの建設を着実に進めつつ、迫りくる「大更新時代」に対応するための計画、体制、システムの整備と、これを支える地元関係企業への支援や担い手となる人材の育成・確保を着実に進める。
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台風14号の復興を進めるとともに、複合的な災害に対する防災・減災の観点で、既存の災害対策を人・物あらゆる角度から見直し・棚卸しし、不足部分を迅速に対応する。
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台風等近年多頻度・激甚化している豪雨災害に加え 南海トラフ等地震 火山噴火等に備え、市町村・国等との連携を強化する
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台風等災害発生後の対応力強化に向けた、蓄電池の普及・促進検討に加え、災害に強いまちづくりの推進に向けた集住推進支援を行う。
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東九州自動車道の未整備区間(日南南郷以南)と九州中央自動車道の未事業化部分の早期の事業化に向けて強力に国に働きかけると共に、事業中部分についても早期の完成に向けて働きかけを続ける。
また、県の果たすべき役割についてもしっかり果たす。
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地域高規格道路やその他の道路についても建設中のものを着実に進めると共に、候補路線についても早期の着手に向けて国等と協議を進める。
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2027年に開催される国民体育大会・全国障害者スポーツ大会に向けて進めている老朽化した体育館、陸上競技場、プール等の建て替えについては着実に進めると共に、完成後の維持管理費や運営費の低減に向けて民間のノウハウの活用を国の支援も受けながら検討する。
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県民の交通利便性の向上や物流網強化、在来線沿線地域の活性化、九州域内における広域周遊・観光の更なる促進に向け、日豊本線を活用したミニ新幹線の整備を検討する。
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老朽化した建築物やインフラの効率的な維持管理や更新に向けて、公共施設等総合管理計画に基づいてエリアマネジメント*12や施設の統廃合の推進、アセットマネジメントシステム*13やこれに基づくメンテナンスサイクル*14の構築を進めるともに、地元関係企業の円滑な協力を引き出すための包括契約や長期契約、性能契約などの新たな契約手法の推進も国の支援を受けながら検討する。
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入札契約制度については、これまで県が進めてきた一般競争入札と指名競争入札の適切な使い分け等も含め、人口減少下でも地元関係企業が雇用を安定的に確保し、技術開発に投資できる環境を保つことで着実に工事量を確保出来るよう、幅広い入札手法の活用の検討を進める。
*12 民間が主体となって特定のエリアのまちづくりや地域経営を行う取組み
*13 組織が所有・管理する施設などの資産を中長期で効率的かつ効果的に維持管理・運営する取組み
*14 インフラの点検、診断、修繕等の措置や記録を繰り返し行う業務サイクル

行政改革
08
人口減少による担い手不足をデジタル技術の力で克服するため、先進的な企業を呼び込み、従来の行政サービスをより便利で使い勝手の良いものにする行政DX(デジタルトランスフォーメーション*15)を徹底して進めるとともに、従来の県と市町村の固定的な役割分担にとらわれない「県民と市町村のために汗をかく宮崎県庁」として、持続可能な新しい地方自治の在り方を構築する。
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国が進める17業務の基幹システムの標準化に全面的に協力し、県内市町村の協力を得て、デジタル基盤を活用した新たな事務処理方法の検討を進め、全国に先駆けたサービス実装を目指す。
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宮崎県内の行政DXを促進するため、市町村の取組を支援し、行政DXに関わる企業との連携のハブとなる「GovTech宮崎推進タスクフォース(仮称)」を設置する。*16
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行政DXに関わるスタートアップ企業や高度IT人材育成の支援を行うために企業版ふるさと納税やエンジェル税制の活用等を検討する。
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将来的に県と市町村の合意に基づく協働事業の実施や市町村から県への事務委託等が必要となる可能性も視野に入れつつ、人口減少下における持続可能な行政サービス提供の在り方を県内市町村とともに検討し、市町村を補完・支援する県の機能を拡充・強化して具体的な行動に移すことで新しい地方自治のかたちを体現する。
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県庁におけるリモートワークを推進し、県庁職員が県内どこに住んでも働くことができ、県内外の副業人材を呼び込めるような環境を整備する。
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マイナンバーカードの人口に対する交付枚数率全国1位を維持し、国の政策と連携して、交付枚数率が100%に近づくよう、県民の理解を得る取り組みを進める。
*15 デジタル技術を普及させることで人々の生活をより良いものにしていく変革。本項目の行政DXでは、デジタル技術の活用により、行政手続きの効率化やデータを活用した政策立案の実現等を想定
*16 Government(政府)とTechnology(技術)を組み合わせた言葉。デジタル技術を活用し、政府や地方自治体の業務効率を図ったり、新たなサービスを生み出したりすること
<東国原八策の推進体制>
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東国原八策の推進に向けた助言を得るために、有識者会議である「宮崎成長戦略会議(仮称)」を設置し、県内外の有識者から東国原八策の推進に有意な知見を有するものを任命する
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東国原八策の実現を図り、「宮崎成長戦略会議(仮称)」を運営する事務局を総合政策部内に設置し、ここに県内外の優秀な人材を集める
<東国原八策の実現に向けた財政運営方針>
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宮崎県の財政は、安定的に経常一般財源が約3,000億円あり、これに占める固定的な経費を表す経常収支比率も90%強であることを勘案して、東国原八策の取り組みが継続することを前提に、2023年から2032年にかけて総額で300億円の予算を経常一般財源の中から重点化し、東国原八策の実現に向けた施策の財源とする。
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過去の財政再建努力が功を奏して実質公債費比率は10%近く(25%を超えると健全化の必要あり)まで下がっており、財政を過度に悪化させない範囲で、危機の突破と将来に向けた投資を積極化する財政運営方針を取る。
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東国原八策の実現に向けた財源としては、現状の財源から予算を組み替えて捻出することに加え、今後新たに獲得する追加的なふるさと納税による収入も充てることとする。
・ふるさと納税の実施者はまだ全国の納税義務者の11.5%(22年)に過ぎず、十分にポテンシャルがあるため、これを最
大活用するために全力でPRに取り組む。
・宮崎県全体のふるさと納税受入額は約463億円(21年)で全国2位だが、これを全国1位で約1,217億円(21年)の北海
道に最大限近づけること(600億円)を目標とする。
・宮崎県は県内市町村で希望するところがあれば、そのふるさと納税の受入推進を全力で支援する。
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林業関連の施策については森林環境譲与税(21年度県分1.7億円、市町村分合計11.5億円)の有効活用を、市町村分については関連市町村とも丁寧に協議しながら活用を模索するものとする。